心に灯り仄かにさし Faint in the heart of light

300km先のスペアキー。単身赴任者の締め出しサバイバル!

Akatsuki232

現在の別宅は、共通のエントランスをカードキーで入り、それから自分の部屋もカードキーで解錠するシステムになっています。

まず、別宅に訪ねて来る人はいません。
NHKも契約を済ませたので、来ません。

ある日の夕刻、ピンポーンと呼び出し音。
見覚えがあるような、いいえ、やはり見たこともない人が、画面に映っています。
どうせ何かのセールスと思い、反応しませんでした。

ところが、あまり時間をおかずにもう一回。
今度は「はい」と返事をしました。
「すみません、カードキーを忘れて出てしまいまして、部屋に戻れません。解錠してもらえませんか?」

駐車場で、挨拶をしたことがある方でした。
解錠。
「どうもすみません〜」と入って行かれました。

防犯が声高に叫ばれる昨今、万が一の危険はありますが、見知っている方だからこそです。

ペットボトルの収集日。
再資源化に、ごみの分別は大事です。
ペットボトルたちが「今日だぞ、忘れんな!」と言っています。
最初に荷物を運び、それからもう一度駐車場へ行く時に「収集かごに入れに行くから大丈夫。私は時間を無駄にしない合理的な判断を働かせている。ペットボトル達よ、騒ぐのではない」と私。

部屋のペットボトルたちをガラガラと収集箱へ。
車に残しておいた食品を持って、部屋に戻ります。
あれ?

ない。
カードキーがない。
上着を脱いだ時に、部屋に置いてきてしまった。

ついにやってしまった。

まずは、管理会社へ連絡。
「同居の方はいませんか?」
「いません」
単身赴任だもんね、いるわけないよ。

「他にカードキーをお持ちの方はいませんか?」
「直線距離で300㎞先にいます」

結局、すぐに解錠する術は無し。
そんなことあるのかぁ〜。
誰か帰ってくるまで、待たなければならない。
「それが最適解です」

別宅は総戸数の60%しか入居していません。
部屋のタイプは、大家族で住むには不向き。
単身赴任者に学生等々、ファミリー層は見当たりません。……というより、入居すらしていないのでしょう。
それが証拠に、建物の明かりはまばらで、部屋の電気も殆ど点いていないのです。

誰かが帰ってくるのを待つなんて……。
同時に入って行く方が、怪しまれる。
まして、事情を説明するために近づいたら、不審者扱いだ。
それが女性だったら、どうする?

絶望的な気持ちで、下から建物を見上げます。
よし、片っ端からインターホンを鳴らしてみよう。
全戸に向けて自己紹介をすることになりますが、入れないよりはいい。

むなしく、呼び出し音が響きます。
そりゃ、知らないおっさんの顔がモニターに映れば、あんまりいいことは想像できないでしょう。

あっ、電気が点いている部屋がある。
そして、駐車場を確認。
挨拶したことのある車が止まっている!

ピンポーン!
「すみません、〇〇号室の〇〇です。カードキーを忘れて外に出ました。解錠してもらえないでしょうか」
「はいはぁ〜い」

情けは人の為ならず。